当科では
一般外科、消化器外科を主軸とし幅広い領域に積極的に取り組んでいます。消化器外科としては、食道から直腸、肛門に至る良性疾患や悪性疾患の外科的疾患を網羅しています。肝胆膵の悪性腫瘍にも積極的に手術に取り組んでいます。鏡視下手術も胆嚢摘除のみならず、胃癌、大腸癌と意欲的に取り組んでおります。
入院中はNST(Nutritional Support Team)回診、理学療法士と連携をとり、栄養状態、身体機能を改善させることにより、早期退院、早期社会復帰を目指しております。
人工肛門の患者様も月に1回、ストマ外来を開設しケアしております。
消化器の悪性疾患に対する化学療法も通院治療を中心に、看護師、薬剤師とチーム医療を構築しています。
消化器外科の強化
従来の梶原正章院長、泉浩副院長、金児潔部長に加え、2022年4月より下松谷匠部長、奥山裕照医長が加わり、消化器外科が強化されました。
鼠径ヘルニア
ヘルニアは一般的に “脱腸”と呼ばれる病気で、おなかの中の腸が体外に脱出することを意味しますが、必ずしも腸とは限らず、おなかの中の脂肪や卵巣が脱出することもあります。ヘルニアの出てくる門、ヘルニアの袋の嚢、内容の3つの因子から成り立ちます。鼠径ヘルニアは足の付け根近くの鼠経部に脱出するヘルニアをさします。
鼠径ヘルニアは外鼠径ヘルニア、内鼠径ヘルニア、大腿ヘルニアがあります。
鼠径ヘルニアは生まれつき嚢(袋)を持っている人と、後天的な因子として、加齢による筋力低下、肥満、咳の多い状態、力仕事や過激な運動などの因子があり、高齢者で増える傾向があります。男性の頻度は女性より多くなります。症状は、鼠径部の膨隆感、違和感、疼痛があります。成人で一旦脱出するようになった場合、徐々に症状は悪化することが多いです。腸が脱出しておなかに戻らなくなることを嵌頓(かんとん)といい、鼠径部やおなかに強い疼痛を感じ、緊急事態となります。
治療は、鼠径ヘルニアに効果的な薬剤はなく、手術療法が唯一の方法です。
手術方法には従来からの前方アプローチ法と腹腔鏡による方法があり、腹腔鏡には鼠径ヘルニアの穴(門)をメッシュで閉鎖するTAPP(タップ)法とTEP(テップ)法があります。TAPP(タップ)法は腹腔鏡をおなかの中に挿入して腹膜を切開し、メッシュで穴(門)を含めた鼠径部を広く補強します。開腹手術歴があり腹腔に癒着がある場合は困難です。TEP(テップ)法は腹膜外から鼠径部にアプローチしてTAPP(タップ)法と同様にメッシュを用いて鼠径部を広く補強します。前立腺がん手術を受けた患者さんでは鼠径部の癒着のため前方アプローチを選択します。術翌日に退院が可能です。
また嵌頓(かんとん)した場合、病院で腹腔に還納(かんのう)する必要があり、還納できない場合は緊急手術が必要になります。この際、腸管が壊死(えし)していればメッシュが使用できない場合があります。
当院ではTEP(テップ)を選択する場合が多いですが、いずれの方法も可能ですので、外来でご相談下さい。
肛門外来
肛門疾患は意外に多い病気で、病院に来院するのに抵抗があるために、長年無治療でそのままにしている方も多いです。また時に癌などの重要な疾患が隠れていることがあります。
不明なことなどはご相談ください。
肛門の3大疾患
いぼ痔(内痔核、外痔核)、切れ痔(裂肛れっこう)、あな痔(痔ろう)が、肛門の3大疾患とされています。
痔核
痔核とは肛門の静脈叢のうっ血と周囲組織のゆるみにより発生し、肛門と直腸のまわりの血管が膨らんでこぶ状になっています。いいかえれば静脈のうっ血ですから程度の差があれ多くの人が痔核を有しています。
肛門の内側(歯状線の上)にできるのが内痔核、外側にできるのが外痔核です。
症状としては、出血、疼痛、違和感、掻痒感などがあります。出血の特徴は排便の際の鮮血が多く、癌などの赤黒い出血と異なりますが、紛らわしいこともあり、正確な診断には大腸内視鏡検査が有用です。
痔瘻(ろう)
痔ろうは、肛門の内側の歯状線にある陰窩と呼ばれるへこみから細菌が進入して発生します。肛門周囲膿瘍(のうよう)を作って腫れや痛みをきたす場合もあります。その膿瘍が肛門部に穿破し、繰り返すことで瘻孔(みち)を作り排膿することがあります。増悪と軽快を繰り返し長年患っている方もあります。
裂肛(切れ痔)
裂肛は、排便の際に肛門部が裂けることで発症し、排便後の疼痛を伴います。多くは便秘で便が固い方に多く、排便痛のため排便を控え、さらに便が固くなるという悪循環が生じます。
時に下痢症で肛門括約筋に通常でない力が加わった際に生じる方もいます。
- 座薬
現在もっとも広く使われており、市販薬もあります。 - 注射療法:ジオン(ALTA法)
注射剤で痔を硬くし、粘膜に固着・固定させる治療です。
内痔核が対象で、麻酔を使いません。治療は日帰り法が多く、翌日から日常生活に復帰が可能です。 - 結紮療法
輪ゴムなどで結紮して切除する方法です。 - 手術療法
ミリガン-モルガン法は粘膜下に結紮切除半閉鎖する方法です。
PPH法:主に全周性の痔核に対し特殊な自動縫合器を使い、下部直腸粘膜を切除、縫合を行います。
痔ろうの治療
開放術:通常の方法で、瘻孔を切除し開放する方法です。痔瘻の部位や深さにより肛門機能が低下する場合があります。
くり貫き法:肛門機能は温存されますが、再発の可能性もあります。
シートン法: 瘻孔に治療用のゴムを通し、外来などで少しずつ絞めていくいく方法です。治癒に時間を要します。
裂肛の治療
薬物療法などで便通コントロールが基本ですが、無効時にはSSG(スライディングスキングラフト:皮膚弁移動術)を実施しています。
当院の外科は肛門疾患に対しても専門的に対応できますので、悩みのある方はお気軽に受診して下さい。
外来化学療法室
外来化学療法室は1階外来の「Aエリア」にあります。現在8床のベッド゙で、ベッドサイドにはテレビが設置されており、週に2回運営しています。クリーンベンチがあり、薬剤をミキシングしすぐにベッドサイドに届けることができます。大腸癌、胃癌、膵臓癌などの消化器悪性疾患、乳腺悪性腫瘍中心に化学療法を行っており、看護師、薬剤師とチーム医療を構築しています。
外来化学療法の年間の件数は、2021年は90件、2022年は131件であったが、2023年は乳腺の化学療法も加わり256件と倍増した。
他科との連携、幅の広い救急体制
2022年4月には消化器内科に安田光徳部長(消化器内視鏡専門医)が、2023年4月に救急科に村井隆太部長が着任しました。外科のオンコールも24時間、365日体制で、多くの腹部の救急疾患に対応できます。